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「アフレコ in LA その2」

(前回からの続き)

時差ボケや満腹感から来る眠気、そして機材を冷やす冷気と戦いつつ挑んだアフレコですが、日本とはやり方が違います。
日本ですと「絵」をある程度まとめて見て、そのシーン群に登場する声優さんのセリフをいっぺんに収録してしまう方法が通常のようです。
しかし、アメリカでは各声優さんをピン録りしていきます。 
掛け合いが多い役同士は一緒に録ってしまうこともあるようですが、そちらの方が稀のようです。
まだフルレンダリングされたCGよりも全然前のアニマティクス(大雑把な舞台・環境の中をまだ見た目的には荒い3Dモデルがモーションキャプチャーの動きに合わせて演技をする「動く絵コンテ」)を見ながら声優さんに演技してもらいます。 アニマティクスとは言っても、各キャラの唇はちゃんと動いてますし、ある程度の表情を湛えています。 なので、声優さんがしゃべると画面に命が吹き込まれていきます。
命が吹き込まれると書きましたが、本作品で幅を利かせている登場人物の多くはご存知ゾンビさん達です。 
本作品のゾンビがそうであるかどうかは別にして、通常ゾンビというと「リビングデッド」、「生ける屍(しかばね)」です。
死体が動いているので、それらに命があるかどうか議論の余地があると思います。
しかし、生きていようと死んでいようと、彼らなくしてはこの作品は成立しません。
ゾンビは独特の声を出します。 正確に言うと、発声ではなく、口から音が漏れているというレベルです。
どうもこの部分の認識が本作品の監督や私のいわゆるゾンビフリークと一般的な非ゾンビフリークの間では違うようです。
監督から
「はい、ではここでゾンビ登場です!」
という指示が出ても、アメリカの声優さんから発せられるヴォイスはイマイチ。
色々試すのですが、全くゾンビってないのです。
そのうち、
「Brains!」(脳みそ~!)
という言葉を滑舌よく発する始末。
これは1985年の映画「バタリアン」というゾンビ映画に登場した通称「オバンバ」という老婆ゾンビのセリフから来ているようです。
この映画、それまでのゾンビ映画の「基本ルール」と違い、ゾンビの脳が破壊されたり、首が切り落とされてもゾンビが「機能停止」しません。
ゾンビ映画としても「画期的」かつ「革新的」だったこの作品のその「Brains!」(脳みそ~!)というセリフは映画が大ヒットした日本のみならず、アメリカでも鮮烈に一般人までをも魅了していたようです。 
映画公開から20年以上経った今そのことを知ることが出来てうれしい反面、うちら「バイオハザード・ディジェネレーション」製作者としては「Brains!」では困るわけです。
そこで監督自らマイクを通じてエンジニアルームから声優ブースに向かって「正調ゾンビヴォイス」を披露します。
その瞬間、録音ルーム全体は恐怖に包まれます。 だってうまいんですもん、監督!

080515studio_hands.JPG
(スタジオの収録風景)エンジニアルームから指示を出す監督(の手)
ただ、私もゾンビフリークとして黙っているわけにはまいりません。 私も監督に続けとばかり、喉を振るわせました。
監督が「アァアアァーッ」系なら、私のはもっとくぐもった「ウゥウウゥーゥ」系です。 
二人で長年蓄積された知識と経験をここぞとばかりぶつけた結果、声優さん達も何とかゾンビの発声をものにしてくれ、素晴らしい演技をしてくれました。
そんな彼らをピンで録音したゾンビ声以外に、ガヤ(環境音として周りから聞こえてくる会話、アナウンス、悲鳴等)でも「生屍声」が必要です。
そこで、アメリカでゾンビ声を出せる人間を増やすことに多大なる貢献をした監督と私も声優ブースに入りました。
ブース内に詰め込まれた我々はかわりばんこにマイクに歩み寄って「ひと吼え」。
(A、マイクに寄る)
「アァアアァーッ」
(A、マイクから離れる)
(B、マイクに寄る)
「ウゥウウゥーゥ」
(B、マイクから離れる)
(C、マイクに寄る)
「ウウァアゥアウァ・・・」
ってな感じです。
これを真剣にやっている姿、はっきり言って美しいです。 そして楽しい!
無事録り終えたゾンビ声のガヤを画像に重ねて観てみると・・・
こ、怖い・・・

執筆:D


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